2019.5.6. 事務局長声明

憲法審査会の強行開催と拙速な審議に反対する


 自民党は、昨年から開催されていない衆議院の憲法審査会の開催を強要した。そして一部野党幹事の「合意」をとりつけ、4月25日に開催させるにいたった。さらにそこでは5月9日の憲法審査会において、民法連の関係者を参考人として招致することを決定した。一部報道によれば、5月9日の審査会で、憲法改正国民投票法の改正案を「審議」し、一気に採決まで狙っているという。

 しかし憲法審査会のこのような動かし方は、以下の点において、とうてい容認できるものではない。

 第一に、昨年末以来、国民と野党のつよい反対によって、両院の憲法審査会は開催されておらず、また開催を必要とさせる状況の変化はまったくない。にもかかわらず自民党は野党にたいして圧力をかけ、野党筆頭幹事との非公式懇談において4月25日の幹事会開催を押しつけ、さらに25日の幹事会において26日の審査会開催を押しつけたという経緯である。これは数の力による政治以外のなにものでもない。

 このことは、憲法審査会の開催には与野党の合意を必要とする、という慣行をくつがえすものでもある。まして憲法改正発議では特別多数が条件とされることからもあきらかなように(憲法96条1項)、とくに憲法改正においては、数を頼みにした「ワイルドな」国会運営(萩生田光一・自民党幹事長代行)はあってはならないことである。

 第二に、憲法改正国民投票法におけるCM規制をめぐっては、「現行法では、資金力の差によってCMの量がきまり、公平性が保たれない」とする野党と、「民放連の自主的な規制にゆだねるべきだ」とする自民党のあいだで意見はまっこうから対立している。しかも民放連は、自主規制に反対の立場をとっている。このまままともな審議もなく強行採決をすれば、必然的に、憲法改正国民投票運動において、豊富な資金力のある改憲派のメッセージだけがテレビで流れるであろう。このような致命的欠陥をもった憲法改正国民投票法の審議を、わずか1日で打ち切ろうということには、一毛の正当性もない。

 第三に、憲法審査会の強引な開催は、憲法9条の平和主義を否定する安倍改憲の早期実現を狙ったものだという点である。自民党は今年2月、「日本国憲法改正の考え方〜「条文イメージ(たたき台素案)」なる文書を全国の所属議員に送りつけ、改憲論議をすすめることを求めている。しかしその内容は、安倍9条改憲のねらいが、自衛隊を「アメリカの指揮下で戦争のできる国」づくりに動員させるためのものであることを隠蔽し、「国民に信頼されている等身大の自衛隊をそのまま憲法に位置付けようとするもの」などと言いつくろうなど、偽りに満ちたものといわざるをえない。

 いま東アジアは、武力によらない平和を実現する絶好の機会である。わたしたち日本国憲法9条の平和主義を愛する科学者・研究者は、憲法9条と立憲主義をないがしろにする憲法審査会の強行開催と、憲法改正国民投票法の拙速な審議につよく反対する。

2019年5月6日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)事務局長
東海大学教授
永山茂樹