2018.2.20 事務局長声明

安倍・自民党の改憲の本質的危険性と科学者・研究者の責務


 安倍・自民党は、改憲をめざし、党内外での調整を急速にすすめている。
 昨年12月20日には自民党憲法改正推進本部が「憲法改正に関する論点とりまとめ」を発表した。これによって、@9条改憲・自衛隊の明記、A緊急事態条項の創設、B参議院の合区解消、C教育充実の4テーマに絞って、改憲を進めていくという方向が確定した。  
 2012年に自民党が発表した「憲法改正草案」と比べて、改憲条項の対象や内容は限定されている。また随所に散りばめられていた復古調の文言も削られた。  
 自民党内の議論はなおまとまっていないが、目下、@’9条2項を存置させつつ自衛隊の存在を明記すること、A’緊急時における内閣の緊急政令権や、内閣総理大臣の財政処理権・自治体の長に対する指示権などを外すこと、などが有力とされている。  
 そうして他党や国民の同意を得つつ、早ければ2018年中の国会発議、2019年早い時点での国民投票という青写真が描かれている。

 しかし、かりに「憲法改正草案」からのスリム化・ソフト化があったとしても、安倍・自民党の改憲の本質的危険性は、まったく払しょくされていない。  
 第一にその改憲は、安保法によって「普通の国」の軍隊に近づいた自衛隊を、憲法的に正当化することにほかならないからである。すなわち憲法に書き込まれる自衛隊とは、災害救助のための組織でもなければ、専守防衛のための組織でもなく、また2015年以前の自衛隊でもない。集団的自衛権を行使し、平常から米艦を護衛し、PKOや多国籍軍へ参加して戦闘行動を繰り広げることができる組織である。  
 第二にその改憲は、自衛隊に対して、これまでなかった「公共性」をあたえることになるからである。そうすると、公共性のあることを理由に、国家・社会のさまざまな領域で、軍事が優先されることになるだろう。そこでは、たとえば国民の権利(知る権利、思想良心の自由、学問の自由、財産権など)が犠牲にされ、また国家財政のあり方においては「バターよりも大砲」の論理が貫かれ、社会保障の切り捨てに拍車がかかるだろう。  
 第三にその改憲は、A緊急事態条項の創設による選挙権の停止(しかもその停止は無期限に及ぶ危険がある)、B「教育充実」の名の下で強化しようとする国家の教育統制、C参議院選挙の「小選挙区化」による多数派の過剰代表状況の固定化など、いずれも、9条改憲とあいまって「戦争をする国」「強権的な国」づくりにつながるからである。  
 第四に、権力者が国家権力を濫用して権力者のための改憲を狙っているからである。すなわち、安倍・自民党の改憲内容とその進め方は、歴史的経験に裏打ちされた人類の英知である立憲主義思想を軽視している。この改憲が危険でないことの理由として首相が示すのは、「この改憲によっても集団的自衛権の行使は限定的なものにとどまる」という首相自身の憲法解釈である。しかしそのような解釈がたやすく覆されてしまうことを、わたしたちは14年7月の閣議決定のときに目撃した。  
 第五に、憲法改正国民投票には問題が多く、ひとびとの憲法意識を正しく表明する仕組みにはほど遠いものだからである。たとえば、投票に最低投票率が定められておらず投票が少なくても改憲が成立してしまうおそれ、公務員や教員の自由が制限されるおそれ、そのことによって国民の知る権利が制限されるおそれ、テレビスポットの制限がないためお金をもった者の意見のみが氾濫するおそれ、などである。

 このような憲法状況のなかで、わたしたち科学者は、いくつかの責務を負っている。  
 第一に、安倍・自民党改憲が、現行憲法の求める「国民主権・平和主義・基本的人権の尊重」からどのように乖離しているかを、科学者の目をもって認識し、それをひとびとに積極的に伝える責務である。  
 第二に、現行憲法の求める「国民主権・平和主義・基本的人権の尊重」を、この社会のなかでどのように実現させていったらよいかということを、不断に検討するという責務である。  
 第三に、国家・社会の軍事化につながる研究を行わず、平和につながる研究を行う責務である。またそのような研究体制を守る責務である。  
 第四に、最後に、教育組織・研究組織のなかで接する、未来ある若者たちが、戦場にいかなくてよい社会を守る責務である。

2018年2月20日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)事務局長
東海大学教授
永山茂樹