2013.11.6 事務局長談話

9条改悪を先取りし、日本を戦争する国に変える「国家安全保障会議設置法案」および「特定秘密保護法案」に強く反対する


安倍政権は、衆議院に設置された「国家安全保障特別委員会」において、「国家安全保障会議設置法案」(以下「NSC法案」)および「特定秘密保護法案」(以下「秘密保護法案」)の審議を開始し、今臨時国会中の両法案の可決を目指している。

「NSC法案」は、自民党が2012年7月に公表した「国家安全保障基本法案(概要)」にもとづき、集団的自衛権の行使を前提にした米国との緊密な軍事的連携を図る組織と位置付けられている。また、「秘密保護法案」は、特定秘密の「漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資すること」を目的とし(第1条)、「防衛、外交、特定有害活動(スパイ等)防止、テロ活動防止」の4分野において行政機関の長が「特定秘密」を指定し、それを漏えいした公務員等ならびに「特定秘密」への「不正アクセス行為」等をした者を最高10年の懲役に処すとしている。また「特定秘密」取扱者を「適性評価」の調査対象とするものである。これら両法案は、10月3日に東京で開催された「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)の合意共同文書では、日本側が集団的自衛権の行使検討を表明し、米国は「情報保全の法的枠組みの構築」を歓迎するとしていることからも、こうした「日米合意」の一環であることは明らかである。すなわち、日本国民の目と耳、口をふさいで日米軍事同盟を強化し、米国の戦争への日本の協力に役立てるのが両法案の真の目的にほかならない。

戦前の軍機保護法は、軍事機密を保護するため、陸軍大臣及び海軍大臣が機密指定した事項全ての探知、収集、漏洩に厳罰で臨み、軍人以外に民間人をも対象とし、言論統制に使用された歴史がある。一般に報道されていた飛行場の位置を外国人に話したとして逮捕された「宮澤弘幸・レーン夫妻冤罪事件」にみられるように、市民の自由は大きく制約された。また「満州事変」を引き起こした柳条湖事件やベトナム戦争拡大の契機となったトンキン湾事件など、重大に事実が長期にわたって秘密にされたことが、政治の歴史的判断を大きく誤らせた。この特定秘密保護法案は、まさにそれらの轍を踏むものといわねばならない。

日本国憲法は、前文において「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」し、第9条においては「戦争放棄」を定めている。安倍首相は「国際協調主義に基づく『積極的平和主義』」を唱えているが、その内容が、実際には「米国との協調に基づく好戦的・軍事的紛争解決」の危険を内包していることは明らかである。すなわち、両法案の成立は、日本国憲法、とりわけその9条の改悪を先取りするもの以外のなにものでもない。したがって、我々は、両法案に強く反対する。

国民の中には、日本の周辺国との関係が緊張の度を増していることから、両法案の成立に「賛成」ないしは「やむを得ない」と考えている人も少なくないことが世論調査の結果に見られる。しかし、日米軍事同盟をいっそう強化し、軍事機密を国民に秘匿し、日本が米国と居並ぶ「軍事大国」となることは、かえって北東アジアにおける緊張を激化させ、戦争の危険を高めるものである。

領土や国境紛争等の問題は、外交その他の平和的手段によって解決する等、真の国家間の「安全保障」を構築することこそが必要であり、またそれは可能である。その好例がASEAN(東南アジア諸国連合)を中心とする東南アジア諸国の動向にみられる。現在、アジアでは、ASEANを中心に「東南アジア友好協力条約」(TAC)、「ASEAN地域フォーラム」(ARF)、「東南アジア非核兵器地帯条約」、「南シナ海行動宣言」(DOC)、「東アジア首脳会議」(EAS)など重層的な平和の枠組みができており、その精神は共通して「意見の相違または紛争の平和的手段による解決」(TAC第2条)に徹することにある。こうした対話の場を通じて、現在、最大の当事国である中国を含めて、南シナ海の領有権問題などの具体的な解決がはかられようとしている。こうした平和的な会議や条約等を北東アジアにおいて推し進めることこそ、本来あるべき「積極的平和主義」の主要な課題ではないか。

2013年11月6日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)
事務局長 本田浩邦