九条科学者の会16周年のつどい「安倍なきあとの安倍改憲」報告


日時 2021年4月10日(土)14:00~16:30
会場 オンライン開催
主催 九条科学者の会・日本科学者会議 共催

4月10日(土)午後に、「九条科学者の会16周年のつどい」(以下、「つどい」)がオンライン開催されました。半年前に、明文改憲を牽引してきた安倍前首相が退陣し、菅政権が発足しました。このことが「安倍改憲」の終焉を意味するのか、それとも日本政治は、改憲策動の新たな段階へと移行したのでしょうか。「つどい」では、このことを解明することを大きな目的として、2つの講演が行われました。約60名の方々が聴講しました。
 講演1では、防衛ジャーナリストで元東京新聞編集委員の半田滋さんが登壇し、「急浮上した敵基地攻撃~踏み越える専守防衛」と題して講演しました。FMSによる米国製の高額兵器の爆買いや敵基地攻撃能力をめぐる日米一体化が、安倍政権下、さらには菅政権下でも進行している現状が詳しく紹介されました。米中対立が緊迫する中、日本政府が敵基地攻撃能力の保有検討を公言し、インド太平洋、南シナ海で米軍と自衛隊の共同訓練を展開していること、更には宇宙をも戦場とみなす米国の軍事戦略「衛星コンステレーション」に日本が加担しようとしている危険性を指摘しました。半田さんは、「日本は、米中双方に戦争を回避させる役割を果たすべきではないか」と述べて講演を締めくくりました。
 講演2では、日本学術会議の元第一部部長で現在は日本学術会議連携会員の小森田秋夫・神奈川大学特別招聘教授が登壇し、「日本学術会議の任命拒否~何が問題か?」と題して講演しました。本講演で小森田さんは、菅首相による学術会議会員の任命拒否を巡って、多角的に検討・検証しました。4月8日に日本学術会議幹事会が公表した「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて(素案)」は、現在の組織形態が「日本学術会議がその役割を果たすのにふさわしいものであり、それを変更する積極的理由を見出すことは困難」だとしていると指摘しました。任命拒否の経緯の説明を拒む菅政権を情報公開請求などで追及し、さらには政権交代が必要になると述べました。「任命拒否は学者の世界の問題だ」と見做されないように、「憲法23条『学問の自由』が市民社会にもたらす一般的意義を深化させなければならない」と訴えました。なお、小森田さんの講演内容は、最近出版されたブックレット『日本学術会議の任命拒否~何が問題か?』(花伝社)で読むことができますので、関心のある方はそちらを参照してください。
 最後にまとめの発言で、九条科学者の会の共同代表である志田陽子・武蔵野美術大学教授が、憲法を巡るこの1年間の状況をレビューし、憲法問題への国民の注視が必要だと呼びかけました。

 (『日本科学者会議神奈川支部通信』(2021年5月1日発行)より転載)