安倍首相主導による改憲策動、来春2回目の米中首脳会談模索という情勢下の11月10日、科学者会議・九条科学者の会共催で秋の講演会「アジアの中の憲法9条」が開催され、会場の中央大学後楽園キャンパスに110名が参集した。
第1講演「東北アジアの平和構築と日本の責任」で和田春樹氏(東大名誉教授・歴史学)は、冷戦後の米国のアジア戦略と北朝鮮孤立化の帰結として1年前の米朝危機に至った経緯とその危機回避への国連の努力、南北会談を経て、歴史的なシンガポールでの米朝会談で米朝核戦争が回避された現時点を確認した。そのうえで、「トランプ路線に追従する安倍首相の『制裁と軍事的威嚇の強化』への同調政策は頓挫し、同時に北朝鮮制裁・ハラスメント政策も破産しており、日本の政策転換、米朝交渉への積極関与へ、あたらしい構想が必要だ」として、「日韓朝の非核化・軍縮・非基地化・平和国家化のため、米中露は三国の安全を保証して不戦を盟約し、これによって日韓朝が米中露を結びつける」という枠組みを示し、「この家の中でこそ日本列島住民・沖縄島民は生き続けられる」と明言。市民運動としても関わられた和田氏の興味深い話だった。
第2講演「自民党・安倍改憲の行方」で永山茂樹氏(東海大教授・憲法学)は、近代立憲主義の原理をまず確認し、その立場から、安倍政権は対ア追い込もうと呼び掛けた。ジア強硬・自由平等敵視・復古主義・性差別によって、その社会的基盤がさらに右傾・狭隘化しており、「展望はなくてもこの道を進まざるを得ない『改憲極右化したスパイラル』に陥っている」と指摘した。さらにアベノミクスの挫折と行き詰まり、軍事化、基礎研究劣化にみる教育・研究政策の破綻、トランプ追随で独自外交戦略を持たずに東アジアの新しい情勢から立ち遅れた、などにふれつつ、「嘘で固められた寡頭支配は続けられない」と強調した。そのうえで、自民党・安倍改憲への批判は、「なくても良い」論(教育無償化)だけではなく、「あっては困る」論が不可欠であるとし、自衛隊の憲法明文化は海外出動隊員の命を奪う、緊急事態条項は国会を無力化し首相独裁となる、などの本質を明確にするとともに、いま取り組んでいる「安倍改憲NO!3千万人署名」をさらに大きく進め、改憲日程がタイトになっている中で、来年の統一地方選、参院選で改憲勢力を追い込もうと呼びかけた。
(松井 安俊・『日本科学者会議東京支部つうしん』No.614,2018.12.10発行 より転載)