「大学や研究機関との連携の充実等により,防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的活用に努める」と定められた2013年12月の閣議決定を契機として,最近,大学や研究機関が防衛省と共同研究を行ったり,研究者が米軍から研究資金を得るなどの「軍学共同」が急進展している.これは,「軍事研究を行わない」という戦後の日本の学術の原点に反して,再び,日本の科学者が戦争に加担をしていくことに繋がる動きであり,私たち科学者にとっては,自らの倫理の問題として看過できないことである.
軍学共同は,現在,具体的にはどのように進行し,私たちはそれにどう対抗していくのかを議論するため,「軍学共同反対アピール署名の会」をはじめとする15団体(「九条科学者の会」を含む)は,6月13日(土)に東京大学駒場キャンパスにおいて、公開シンポジウムを開催した.約130名の科学者と市民が参加をして,熱心に議論を交わした.
基調講演を行った藤岡惇・立命館大学教授(経済学)は,冷戦期における米国の軍学共同を例に挙げ,「軍需に依存をすると国際競争力を失う」と述べ,軍産学複合体が大手を振るう社会の危険性と弱点を説明した.討論では,研究費が削られている中で,科学者が軍事研究へ誘導されやすい環境が作られている現実が紹介された.一方,戦後,運動によって学内で確立された軍事研究禁止の原則に基づき,軍学共同反対の運動を行っている東京大学の経験などが紹介され,参加者を励ました.
今回のシンポジウム開催を節目として広く市民社会とも連帯し,また軍学共同反対アピール署名への賛同呼びかけを継続して,さらに運動を広げていきたい.
(浜田盛久)