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ようやく訪れた秋晴れのなか、九条科学者の会は、東京大学教授で哲学者の高橋哲哉氏を招き講演会を開催しました。事務局長の本田浩邦氏が開会の挨拶を行い、大藤紀子氏(獨協大学法学部教授)が司会をつとめました。100名以上の参加者が詰めかけました。
高橋氏は、少年時代に過ごした福島が見捨てられようとしていること、また沖縄も琉球独立論が叫ばれるほど憤りが強まっていることをあげ、沖縄や福島の人々はいま「はたして自分たちが本当に日本人なのかどうか」という疑問に直面しているとし、「犠牲のシステム」として現状をとらえる見方を提起しました。
また、安倍首相は「日本を取り戻す」といいつつ、戦後の基本的人権を守ると述べたり、「村山談話」を継承しないといったり、「全体として受け継いでいく」といったり、その場その場でウソを積み重ねていると述べ、安倍氏がアーリントン墓地の戦没者の埋葬と靖国神社とを同列において、靖国参拝を正当化する誤りを批判し、「靖国はそれ自体が侵略行為を否定し、戦死者を英霊として顕彰する特殊な宗教施設である」とその根本的な違いを指摘しました。
自民党改憲草案について、高橋氏は、それが「天皇を戴く国家を未來に継承する手段として国民を位置付けるための憲法」であり、基本的人権など近代的条項はそれに付随的に付け加わっているにすぎないと、草案の根本的な歴史認識の問題を明らかにし、条文ごとに逐条的に検討を加えました。
参加者からは、排外的なヘイトスピーチに対する対応のあり方、リベラル派結集の可能性、最高裁判事の公選制の是非など多岐にわたる質問や意見が出され、高橋氏はそれらに逐一応えました。
(九条科学者の会事務局長 本田浩邦 『日本の科学者』2013年12月号より)