九条科学者の会は、元外交官で広島平和研究所元所長の浅井基文氏を招き、秋の講演会を開催しました。約120名が参加しました。
浅井氏は、はじめに、石原都知事の発言に端を発した尖閣問題を取り上げ、政治家、官僚、財界の質的劣悪化が進んでいることを明らかにしました。「民主党は『領土問題は存在しない』と言いつづけ、中国との棚上げ合意を一方的に反故にする一方で、外務省は、実際に軍事衝突に陥る可能性を考えずに問題に対処するという無能ぶりをさらけ出した。民主党に政権担当能力があるか疑問である。現政権は自民党時代にましてひどい」と指摘しました。
浅井氏は、他方で、中国が目指すものを「覇権争奪を行わない新しい大国」と特徴づけ、その特徴を明らかにしました。「中国は『4つの巧み』として、各国の利害対立、政権交代の過渡期の不安定性、東アジアの複雑な国家間関係を処理しようとしているが、こうした中国の動きに対応できず、日本は米中の狭間に埋没し存在感を失った」と述べました。
続いて浅井氏は、日本の現状が、〈大西洋憲章・ポツダム宣言・日本国憲法〉の系列と、〈トルーマンドクトリン・サンフランシスコ条約・安保条約〉の系列の対立として表現できると述べ、その上で、前者を軸に、「力によらない平和」「人権・デモクラシー」を基本にした国際関係を築き上げることがいま重要であると結びました。
質疑では、「中国の国内の民主主義の状態や資源外交などをどう評価するか」「総選挙が迫るなか、どのような政治再編を期待するか」などの質問が出されました。浅井氏は、「国内の少数民族抑圧やスーダンへの援助など中国にさまざまな問題があることはそのとおりであるが、それは他の先進国も抱える同種の問題ととらえるべきで、新しい成長のあり方が考え出されなければならない」「憲法・反原発を重視する勢力の躍進が期待されるが、それらが目先のことばかりを考えているようではいけない」と応答しました。