『九条の会』のアピールを広げる科学者・研究者の会
発 足 二 周 年 記 念 の 集 い
を、2007年3月11日、下記のように開催いたしました。

★日本国際法律家協会事務局長笹本潤さんに「グローバル9条キャンペーンと憲法9条の普遍性 」と題して記念講演をしていただきました。
★学生・院生・教員・地域における科学者・研究者の取り組みの交流を行いました。
★2007年度の活動方針を採択しました。
★集会アピール「私たちは、憲法改悪のための非民主的な「国民投票法案」に強く反対します 」を採択しました。
★立命館大学名誉教授・須田稔さんから素晴らしい「閉会の辞」をいただきました。
★集会後、中央大学駿河台記念館1階,レストランプリオールで懇親会を開催しました。



「九条科学者の会」発足2周年記念の集い
日時 2007年3月11日(日) 12:30-16:30
会場 日本大学歯学部 2号館 第1講堂

次第
12:30 開会
     開会挨拶  野口 邦和(日本大学、発起人)
     経過報告  事務局長 片平 洌彦(東洋大学)
12:55 記念講演
    笹本 潤(日本国際法律家協会 事務局長)
    「グローバル9条キャンペーンと憲法9条の普遍性」
14:05 休憩
14:15 各地活動の報告・交流
     若手の取り組み1.東京院生九条の会
           2.明治大学学生九条の会
    地域での経験 3.9条科学者の会・かながわ
           4.筑波研究学園都市研究所・大学関係9条の会
    教員の取り組み5.早稲田大学の取り組み
           6.中央大学の取り組み
    その他   7.フロア発言(山形大学九条の会、大阪市大九条の会、他)
           8.東京の学生九条の会ネットワーク「9条秋の3千人集会実行委員会(準備会)」
15 : 45 2007年度の活動方針について 方針提起  米田貢(中央大学)
        集会アピール  提案 片平洌彦(事務局長、東洋大学)
16:20 まとめと閉会挨拶  須田 稔(立命館大学名誉教授、憲法9条・メッセージ・プロジェクト事務局長)
16:30 閉会 

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◆記念講演 講師 笹本潤さんのプロフィール

弁護士。あかしあ法律事務所所属。現在、日本国際法律家協会事務局長。GPPAC JAPAN共同代表。中国戦後補償裁判を経て、現在9条を守るだけでなく、世界に広める「グローバル9条キャンペーン」を展開中。9条世界会議・日本の実行委員。





「九条科学者の会」2007年度活動方針  

2008年3月の「発足3周年記念の集い」めざして、以下の取り組みを進める。

1.昨年の発足1周年の集いで採択された「7つの行動提起」(注*)のいっそうの実践をはかる。
2.当面の緊急課題として「改憲手続き法案」の成立阻止に全力をあげる。
3.科学者・研究者の賛同署名1万名を早急に達成する。全国各地での賛同者によるできるだけ多くの学習会・集会の実施および九条の会組織作りをめざす。
4.「九条の会」が主催する「憲法セミナー」、および2007年11月24日の「全国交流集会」の成功に協力する。
5.2007年5月3日の日本国憲法施行60周年関連の行事、および2008年5月に予定されている「九条世界会議」に対し、可能な連帯をはかる。
6.今後の会の活動の飛躍的発展をはかるため、以下をおこなう。
(1)「発起人会議」ないし「呼びかけ人会議」の開催を検討する。
(2) 事務局体制の拡大・強化に取り組む。また、活動の基盤である財政強化に取り組む。
(3) 科学者・研究者と他階層(学生・職員・地域住民など)とが連携するネットワーク型の運動づくりをめざす。
さしあたり首都圏各大学の9条の会のネットワークを作り、
(a)首都圏の全ての大学・研究所に9条の会をつくる運動を開始する
(b)2007年11月に東京の学生が計画している大集会の成功のため、教員・職員・地域住民等の協力を得るようにする。

2007年3月11日

注* 「7つの行動提起」(2006年3月12日)
(1)日本国憲法の改悪を阻止し、平和と民主主義を確立するため、科学者・研究者が旗幟を鮮明にして、良心を社会に示し、平和と民主主義を守る国民運動を強めていきましょう。
(2)「九条の会アピールへの賛同署名」をさらに大きく広げていきましょう。自分が所属する大学・研究所や、専門分野の友人・知人に賛同を働きかけましょう。
(3)諸団体が主催する講演会、シンポジウム等にも積極的に参加していきましょう。さまざまな分野の知識人・文化人・芸術家・宗教者などとの連帯活動を深めていきましょう。
(4)個人で出来る活動に創意を発揮し、人々の目に見える活動をしましょう。例えば、友人への手紙、憲法グッズ普及、車等へのステッカー張り、自宅・居住地での九条ポスター張りなど、さまざまな活動があります。「地域九条の会」等での講師などにも積極的に名乗り出ていきましょう。
(5)賛同署名運動を契機に、各大学・研究所・地域毎に、多様な形態で「九条の会」を作りましょう。宣伝・組織活動を強めましょう。「九条科学者の会」のホームページを活用し、運動の経験交流を全国規模で深めていきましょう
(6)科学者・研究者にふさわしい理論・実践活動を展開し、その成果を多くの人に知らせましょう。
(7)次の世代を創る主体は若者です。院生・学生への働きかけや、若者達の自主活動を積極的に支援しましょう。若者の新鮮な感性、エネルギーを運動に取り入れ、運動に「新しい風」を吹かせましょう。




「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会・発足2周年記念の集い・アピール

私たちは、憲法改悪のための非民主的な「国民投票法案」に強く反対します

 自由民主党は、2005年10月に、自衛軍を保持し海外での戦争参加を可能にするために、現憲法の9条2項を変えるなどの「新憲法草案」を決定した。小泉前首相の後継者となった安倍首相は、任期中の5年間の改憲を目指しており、自民・公明の与党は、2006年5月、「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」(以下「国民投票法案」)を国会に提出した。その後、与党は民主党案との「すり合わせ」を行い、一部を修正のうえ、2007年5月3日までにこの修正案を国会で成立させようとしている。

 「国民投票法案」は、これまでの報道によれば、@投票権者を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる、A政党等による無料の放送・意見広告の扱いを賛否平等にする、B公務員・教育者の運動制限違反への罰則は設けない、等の諸点が修正されるという。しかし、依然として、以下のように、改憲をしやすいように「ハードル」を低くし、運動への規制をかけているのが特徴である。

(1)最低投票総数の規定がなく、かつ、実質的に最も少ない賛成で改憲が成立するように、白票・棄権票を除外した「賛成・反対票」を「有効票」としている。
(2)上記のように、無料の放送・意見広告については平等にするとしても、マスコミによる有料広告については無規制である。また、テレビ・ラジオによる広告放送の禁止は、投票日の14日前からとなっている。これらの規定は、財力のある改憲派に有利に働くのは明らかである。
(3)公務員・教育者の運動制限違反への罰則は設けないとの修正についても、運動制限を規定することに変わりはなく、運動を行った公務員・教育者に対する行政処分が行われる可能性も否定できない。
(4)「組織的多人数人買収及び利害誘導罪」を新設し、政党、組合、市民団体等の運動を規制しようとしている。

  国の基本法であり、国民全体にかかわる憲法の改正を行うためには、国民の多くが改正の必要性を認識していること、つまり、改憲に向け国民的要求が存在していることが大前提である。然しながら、各種の世論調査では、そのような国民的な要求は明示されていない。にもかかわらず、安倍首相は、7月の参議院選挙の「争点」にするとまで公言している。そして、与党は、上記のような、民主主義の根幹にかかわる重大な問題点を含む法案を、短期間の審議で成立させようとしている。

 このように見てくると、今回の国民投票法制定の動きは、これまで多くの個人・団体が指摘してきたように、米国等とともに「戦争する国」を作るため、九条改悪をはじめとする憲法改悪を急ぐが故に推進されていると断ぜざるを得ない。「九条の会」アピール冒頭の記載のように、まさに、「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされている」。

 「九条の会」アピールへの科学者・研究者の賛同を集め、アピールの国民への普及をはかることを目的に活動している私たちは、以上の理由から、今回の「国民投票法」制定の動きに強く反対し、ここに声明する。

2007年3月11日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会
発足2周年記念の集い 参加者一同



須田稔先生の閉会の辞

戦争するな と叫ぶことは テロの犠牲者への裏切りではない
戦争やめろ と叫ぶことは 戦場にいる兵士への裏切りではない
いまこのとき 沈黙することは 理不尽にいのち奪われた すべての人びとへの裏切り

崖っぷちに立っているわたしたちは マルティン・ニーメラーの言葉を思うのだ

  ナチ党が共産主義者を攻撃したとき、私は多少不安だったが、
  共産主義者でなかったから 何もしなかった
  ついで ナチ党は社会主義者を攻撃した 私は前よりも不安だったが
  社会主義者ではなかったから 何もしなかった
  ついで 学校が 新聞が ユダヤ人などが 攻撃された
  私は ずっと不安だったが まだ何もしなかった
  ナチ党は ついに教会を攻撃した 私は牧師だったから行動した
  しかし それは遅すぎた

飽くことなく真理を探究するわたしたちは いま改めて 自問しなければならない
誰のために なんのために その探究をおこなうのかと
世界がぜんたい幸福にならないうちは 個人の幸福はありえない と宮澤賢治は書いた
そうなのだ 学問は人間のため いのちあるすべてのもの 地球の持続のためにある

軍産複合体の強大な帝国が 戦争中毒になり テロ国家の親玉になり
今日の世界で暴力の最大の調達人となり 地球はおろか宇宙までも軍事力で支配を策す
大量殺傷と破壊の効率を高めるために 科学技術が駆使され
人間の安全保障よりも 軍事的攻撃体制の安全が優先される
人間らしい理知も感性も想像力も いのち豊かに健やかにという 素朴な願いすらも
つまりは 存在価値すらも 砂粒のように無視され足蹴にされ
所有価値 付加価値ばかりが もてはやされる 人間の福祉よりは軍事力だという妄信

来る5月3日に施行60周年を迎える日本国憲法
誕生一年と経たぬうちに この嬰児は帝國アメリカから虐待されはじめ
近年は国務省の高官から 日米軍事同盟の強化の障碍物だとなじられ
防衛庁は防衛省に昇格 自衛隊の海外派兵は主要任務になり
教育基本法を変えて愛国心を強要し 戦争放棄の第9条を破り捨てようと構えている
他国の人びとを戦争で殺してなるものか 二度と加害者にさせられるものか
非戦・非暴力・反戦の力を 広く強く構築しなければならない 被害者を生まぬために

テッサ・モーリス・スズキのことばを 肝に銘じよう

  もし私が 私のために行動しないのなら
     だれが 私のために行動するのか?
  もし私が 私のためにだけ行動するのなら
     私は いったい 何者か?
  そして いま行動しないなら
     いつ するのか?

賛同署名2月末2279人 奮起しなければ

2007・3・11 須田稔